ベルガモッチーニャ

なんだかがやがや騒がしい。俺は知らぬ間に眠ってしまったようだ。

芝生にそのまま寝転がっていたのでなんだか首のあたりがチクチクする。

起き上がってみるとなんだか人が増えている。最初に目についたのは

目つきの鋭い悪そうな感じの男だ。ゴルドーと何か話しているようだが、

俺が起き上がったのを見てこちらに近づいてきた。そいつが「japonese?

と聞いてきたので「sim」と答えるとそいつは合掌してぺこりと頭を

下げながら「アリガトーアリガトー」と言ってから「俺はイヴァニオだ」

と言って手を出してきた。この「アリガトー」とか「Oi Japao!(おい、

日本人)」と呼ばれたりとか、あるいは目じりを引っ張って狐目にする

ポーズを取られたりすることがよくある。その都度むかつくのだが、

基本的にこいつらに悪気はないのだ。俺も少し慣れてきたのでイヴァニオ

と握手をする。それにしてもチンピラみたいなやつはみんなイヴァニオ

って名前なんだろうか?ろくな名前じゃねぇなと思いつつふとイヴァニオ

の後ろに目をやるとなんだかすごくかわいい子がこちらに向かってくる。

俺の目がその子にくぎ付けになっているとイヴァニオが「Amanda vem aqui,

ele e Jpaonese(
アマンダ、こいつ日本人だってよ。こっち来いよ)」と

言ってその子を呼んだ。

その子はゆっくりとした動作でこちらに向かってくる。ふーん、アマンダ

というのか。その子はほっそりしていて身長150p半ば。少し濃い金髪で

肌は真っ白。グリーンとも茶色とも青ともつかないとてもきれいな瞳。

白いボディコンを着ていたんだけど、ウエストはすごく細いくせにお尻は

大きく張り出していて胸はしっかり谷間が出来ているものの、茶碗を

返したぐらいのちょうどよい大きさ。エロさと清楚さが凄くいい感じで

ミックスされブラジルに来て初めて「この子すごくかわいい」と思った。

一番の理由は顔が何だか東洋人ぽい可愛さだからだろう。いわゆる外人の

美人ではなくアニメなどで表現される日本人の超かわいい子って感じだ。

思わずぼーっと見とれていると「ゆらり」という感じでアマンダが俺の

前にやってきた。どういう反応をしていいのか分からずうろたえていると

アマンダのほうから「oi todu bom?こんちは。調子どう見たいな感じ)」

と言ってきた。「bom,eu sou Nico,muito prazer(いいよ。俺はニコ、

よろしく)」と返し手を差し出すと「Amanda.Prazer(アマンダよ。

よろしく)」と言って俺の手を握ってきた。他にもちょっと色の浅黒い

感じの、若いころの田中律っちゃんみたいな活発かわいい感じの子も

いたが俺は断トツでこのアマンダという子に惹かれた。そうそう、

この子たち(イヴァニオも)はみんなが川に遊びに行った時に仲良く

なった地元連中らしい。キャンプしているよと言ったら「ちょっと

遊びに行ってみようかな」って感じでついて来たらしい。

何とかアマンダを口説きたいと思ったのだがまだここにきてたいして

時間がたっていない。そもそもこんなにかわいい子だからだれか彼氏が

いるかもしれない。そんな子を口説くとトラブルのもとだ。少し様子を

見ようと思い「tomar cerveja?(ビール飲む?)」と言いつつ距離を取ろう

とビールケースに向かうと「nao,nao obrigado(いい、いらない)」と

言われてしまったのでどうしていいかわからなくなり、取り敢えずぬるい

ビールを一本取り出し栓を開けて飲んだ。他のみんなもしばらく新しく

できたジモティーの友達と話していたが、俺はなんとなく輪に入れず一人で

腸詰を細かく切りつつつまみにしてビールを飲んでいた。そのうち一人

また一人と帰っていってしまい、アマンダも振り返りもせずにどこかに

行ってしまった。なんだかすごく残念な気持ちになり、ルシアノに

ela foi para casa?(彼女は帰っちゃったの?)」と聞くとそうだと

いってから「voce ela gosta?(お前彼女が好きなのか?)」と聞いて

くるので「voce nao acha ela e fofa?(彼女凄くかわいいと思わないか?)

というとなんだかすごくにやにや笑っている。そして近くにいたウスチア

に向かって「ele gusto dela(こいつ彼女が好きなんだって)」というと

ウスチアもにやにや。「ela tem namorado?(彼女は彼氏いるのかな?)」

というと「disse que nao(いないって言っていたぜ)」と言って二人でニヤ

ニヤしているからもう一度「voce nao acha fofa?(彼女かわいいと思わ

ないのか?)」というと二人は大爆笑。そして「e bonito! Mas ela muito

odor!!
(かわいいけどさ、彼女凄い腋臭じゃん!!)」だって。

俺は全く気が付かなかった。というよりも、もし彼女とお近づきになれる

んだったらそんな腋臭ぐらいなんてことない!とか思っていた。

こういう田舎は夜になると若者が集まるダンスパーティーというかディスコ

みたいなのが出来る。出来るというのは要するに常設のディスコではなく

例えば日本で言う農協の倉庫みたいなところがそういう社交の場に変わった

りするわけだ。


ルシアノが彼女をディスコに誘ってみたらというので、ここでもそういう

のがあるの?(というのはそんなのがあるとは思えないほど田舎だったので)

と聞くと、あると思うよというから彼女がまた戻ってきたら誘ってみようと

思った。その後だらだらとビールを飲んだりルシアノが焼いた肉を食べたり

しながら日が暮れるのを待ったが、彼女は戻ってこなかった。俺ががっかり

しているとウスチアが「vamos para casa dela(彼女の家に行ってみよう)」

というので何で知っているんだろうとびっくりしつつ、なんだかすごく

恥ずかしかったので「nao uqe ir(行かなくていい)」と言ったんだけど、

結局彼女の家に行くことになった。因みにウスチアがその辺を歩いている人に

onde esta casa de Amanda?(アマンダの家はどこ?)」と聞くと

簡単に教えてくれた。彼女の家の前につくとウスチアが「vai行って来いよ」

というので「nao(嫌だよ)」と押し問答しているとルシアノがさっさと車を

降りて家の前にいきノックした。最初お父さんらしき人が出てきて

ルシアノがその人と話しているとほどなくアマンダが出てきた。やった!

と思ったのもつかの間、彼女が家に戻りドアが閉まるとルシアノが車に

戻ってきて「uma pena(残念だったな)」といった。なんでも親に夜出歩く

のはだめだといわれたらしい。そんなことより驚いたのが、彼女は

てっきり同じ年くらいかと思っていたが、なんと14歳だったらしい。

そりゃ夜遊びはだめだよな。でも俺がそういうとウスチアが「idade nao

importa,(
年は関係ない)o importante e o peso(大事なのは体重だよ).

Tudo bem se tiver mais de 40kg40キロ超えてりゃ問題ないよ)」だって。

おそらくこいつらマジでそう思っているんだと思う。実際この後ある事件が

起こるんだけどそれはまたあとで・・・。