タトゥーマシンについて。

今回はタトゥーマシンについて語ってみたいと思います。

タトゥーに興味の無い人にとっては何ともどうでもいい話だと思いますけど、

とりあえず書いちゃいますね。

さて、タトゥーというのは言わずと知れた皮膚の下に針などを使ってインクや

墨を入れ体に絵や柄を残す物です。

ちなみに日本で「刺青」と書くのは、黄色人種である我々の皮膚の下に、墨を

入れると真っ黒ではなく藍色がかって見えた事による物で、僕は本当の墨を

使った和彫りというのは本当に綺麗だと思います。そんな入れ墨というのは

僕にとっては「アート」ですが、時代によっては「罪人の証」だったり、「成人の

証明」だったり「身分や出生の証明」だったりします。

このように皮膚のしたにインクなどを入れるために針を刺す方法として「手の力

のみで針を刺す」方法と「機械を使って針を刺す」方法があります。

手の力で針を刺す方法としては和彫りの場合長い棒の先に針をまとめた物を

取りつけてそれを肌に針を刺し墨を入れていきます。タイなどの僧侶が施して

くれる伝統的な物だと「L字型」に曲がった棒の先に針を付け、トンカチを

叩く要領で墨を入れる物もありますね。どちらも手の感覚のみで針を入れる

深さを調節するわけですから、熟練を要する技術なのだと思います。

では機械で墨を入れるのは熟練の技術はいらないのかとなるわけですが、

そんなこと有りません。もちろん機械でも熟練の技術はいるわけですが、

総じて手の感覚だけで彫るよりも品質が安定するのではないかと思います。

その機械彫りですが、機械にはいくつかの種類があり、と言うか大きく分けると

2種類。最近はその2種類を掛け合わせたハイブリッドなる物や、動力を供給

する配線が無くバッテリータイプのものもあるようですが、基本的にはコイル

と呼ばれる電磁石を動力とする物と、モーターを動力とする物の2種類に大別

出来ると言っていいと思います。



まずはこちらが一般的なコイルマシンですね。画像はインターネットから勝手に

お借りしちゃいました。

黒い筒状の物がコイルです。要は電磁石で鉄心に銅線をまいた物。



お次はロータリーです。モーターのシャフトに変心したカムがついていて、

そいつにダイレクトにニードルと呼ばれる針を付けます。シンプルでしょ。




最後はペン型です。うーん、やっぱりどうも好きになれません。

まだペン型についての説明はしてませんでしたが、追々出てきますので、

何となく形を覚えておいてくださいね。・・・それにしても味気ない・・・・。

詳細は後々説明していくので、何となく各々の形の雰囲気だけ掴んでください。

歴史的に古いのはコイルマシンで、ロータリーと呼ばれるモーターを動力とした

マシンは比較的歴史は浅い様ですね。

私的には原理として単純なのがコイルマシン、構造として単純なのがロータリー

マシンという感じだと思いますがどうでしょう。

と言うわけで、それぞれのマシンの特徴などをお話ししたいと思いますが、

タトゥーマシンというのは針を上下させ皮膚に針を刺してインクを皮膚の下に

入れるためだけのマシンです。人類にとってこれ程潔く、且つ「無駄」な機械

と言うのも珍しいですよね・・・。

さて、タトゥーマシンについて説明をするのにいきなりディスリから始まって

しまいましたが、まずは歴史の古いコイルマシンからお話ししたいと思います。

コイルマシンがどういう物か文字で書くと、「電磁石によって反復運動をする

棒の先に針を付けた物」です。・・・何言ってるのか全く分かりませんね?

そりゃそうです。もっとかいつまんで言いましょう。昔の目覚まし時計とかで

時計本体の上にベルがついていて、時間になるとそのベルの横に取り付け

られたハンマーがベルを連打し「ジリリリリリリリリリリッ!!」とけたたましい

音を出すやつ有るでしょ。あのベルを叩くハンマー、あれ反復運動ですよね?

で、そのハンマーの部分に針を付けたような物だと思ってください。

ジリリリリとベルを叩く代わりに「プスプスプスプスプス」と針が皮膚に刺さって

インクを入れていくのです。

対するロータリーマシンですが、これはモーターを動力とします。モーターという

のはご存知の通り電気の力でシャフトをまわす物ですが、さっき書いたコイル

とちがってこちらは円運動です。ドリルのような動きを求めるならいいのですが、

針を「刺す」という反復運動が必要な場合果たしてどうするか?簡単です。

モーターシャフトの先端にディスク状の物を取付け、モーターシャフトのセンター

からずらした位置に針を取り付ける場所を設ければいいんです。はい、またまた

何を言っているのか分かりませんね?では皆さん。あなたの体を使って蒸気

機関車の動きを再現してみてください。

小さく前へ習えをする場合、肘を直角に曲げ肘から先を先方につきだすでしょ?

その状態で「シュッポシュッポ」とか言いながら手を回して腕を前後させません?

はい、これです。蒸気機関車の動輪というのは言わずと知れた円ですが、

それを表すあなたの動きは反復運動。蒸気機関車の車輪は「車軸」からずれた

位置に蒸気の力を伝えるシャフト(棒?)がついていて、それが車輪を押し出す

事によってすすみます。ここで言う機関車に動力を与える棒がタトゥーマシンで

言うところの「針」になります。蒸気機関車の場合この棒(タトゥーマシンで言う

ところの「針」)によって車輪に動力を与えますが、タトゥーマシンの場合「モー

ター」が車輪に動力を与え「針を動かす」のです。

冒頭「原理として単純なのがコイル」「構造として単純なのがロータリー」と書き

ました。本来モーターというのは内部にローターやステーター、ベアリングなどが

あり、それなりに複雑な構造なのですが我々はその内部を目にすることは

ほとんど無く「モーター」として認識します。ロータリーマシンはこのモーターに

針を付ければいいだけなので「構造として単純」といえるでしょう。

さてお次はコイルマシンです。先ほども書いたとおりコイルマシンは電磁石の

原理で動作するバーに針を付けたもの。コイルと呼ばれる電磁石の上に

バネで固定されたアマチュアバーという棒(目覚まし時計で言う、ベルを叩く

ハンマー)がついており、このバーに針を着け使用します。

この棒はある種のスイッチになっているのです。通電すると電磁石に引き寄せ

られてバーが下がります。すると接点となっていた部分からバーが離れ、

電磁石の磁力が無くなるわけですが、そうするとバネの力で最初の位置に

もどって通電し、再び電磁石に引き寄せられ・・・・と言う繰り返しで反復運動

するわけでです。

ロータリーマシンはモーターの駆動音のみですから比較的静かなのに対し、

コイルマシンはベルこそ叩きませんがアマチュアバーがコイルを激しく叩きます

ので、「ジィィィィィィィ」という結構派手な音がします。

コイルマシン、ロータリーマシンとも一長一短あるようで、例えばコイルマシンは

細かなセッティングが可能な代わりにそのセッティングが面倒くさいとか、

ロータリーマシンはセッティングなどが楽だし音も静かだけど微調整が効かない

とか。これはそれぞれの仕組みにあり、ロータリーマシンがモーターの回転

運動をそのまま上下運動に変換しているため、そのストロークなどが変えにくい

(可変カムなどもあるので出来ないとは言いませんが)のに対し、コイルマシンは

コイルによって反復運動を行うアマチュアバーを押さえているバネであったり

接点のバネやコンタクトスクリューであったりを調整することにより細かな調整

が可能です。最近ではモーターを使っているのにリアスプリングと同様の仕組み

を有してアマチュアバーを動かす「ハイブリッドタイプ」なる物もありマシンは日々

進化しているようです。更に今の流行としてはペン型と言って太いペンみたいな

形の物で、先端にチップとニードルが一体になったカートリッジを取付けるタイプ

の物があり、これはそのカートリッジを変えることによりライナーにもシェダー

にも使えるほか、バッテリー一体式でパワーサプライのコードすら無いものも

あるようです。

ここで僕の個人的な意見を一つ述べさせていただくと、アメトラは絶対コイル

マシン。或いはせめてラインだけはなんとしてもコイルに拘りたいですね。

なんか本当に一生体に残るアートをお手軽なマシンで彫って欲しくないし、

アメトラと言えばやっぱりコイルマシン。コイルマシンは一説によると百年以上

の歴史があるとか。これも全然うなずけます。とにかく「ジィィィィィィ」というあの

音がないと彫ってもらっている気がしない。と言うか彫ってもらう気にならない。

とはいえ、時代はペン型です。僕が「ラインぐらいせめてコイルマシンで入れま

しょうよ!」なんて言ったところでそんな発言時代遅れも甚だしく、「もうそんな

時代じゃありませんよ」と言われて終わりでしょう。

最近は和彫りを得意とする彫り師さんも機械彫りの人が殆どです。

ペン型を使う人もいる中、昔手彫りで和彫りを入れた人たちに言わせると「和

彫りを機械で入れるってのはどうかと思うよ」と言うことになると思います。しかし

殆どの和彫りの彫り師さんも既に機械彫りです。

冒頭申し上げたとおり「手彫り」と「機械彫り」においてはその差が結構ある、

と言うより機械彫りの方が(アジは損なわれるけれど)クオリティーは安定する

のではないかとおもいます。ただコイルマシンか、ロータリーマシンか、はたまた

ハイブリッドやペン型、パワーサプライもコード式かバッテリー式かという部分に

置いては、手彫りと機械彫りが馬と車の違いなのに対し、マニュアル車か

オートマ車かの違いのような気がします。要するに「彫り師さんの気持ち次第」

と言うより拘りによりコイルが消滅していくことはないと思うのですが、人間って

楽な方に流れちゃいますからねぇ・・・・。

さて、今回はタトゥーマシンについてちょっとだけ書いてみたわけですが、

全人類の殆どが興味もないし、知ることもないし、関わることもない機械。

しかしそこで密かに進化し、或いは歴史を残し、変化していく。

なんだかとっても奥深いというかなんというか・・・・。

最後になりますが、僕、タトゥーマシンの造詣が格好良くて好きです!