昭和の4気筒バイク

最近のバイクは2気筒とか3気筒というのが主流な様ですね。或いは単気筒も

かなりな人気ですが、その昔は400cc以上は4気筒というのがデフォルト状態

だった様に思います。

401cc以上のバイク免許を取得するのが異常に難しかった時代であり、多くの

ライダーが手にするのは400ccバイクが殆ど。時はレーサーレプリカ大ブーム

ですからまぁ、4気筒以外はバイクじゃないわけです。

そんな中僕はドゥカティーという2気筒のバイクに乗っていたのですが、確かに

単純に4気筒エンジンへのあこがれみたいなものがアリはするものの、僕の

乗っていたドゥカティーが優秀だったのか回転に関して不満(確かに4気筒の

レスポンスは魅力でしたが2気筒だから「回らない」という不満)は有りません

でした。確か8千回転からイエローゾーンで9千回転からがレッドゾーンだったと

思うんですが、レッドまできっちり回りきりましたし、8千回転辺りの領域で走って

いるときもストレスを感じることはありませんでした。

なんというか「回しきって乗れるエンジン」というのでしょうか。

イタリア車ってこういうの多いですよね。例えばフィアットのパンタやウノ。

1000ccくらいの背負う排気量車ですが、パワーがない分「回せるだけ回して

乗る」みたいな。これが何とも楽しいんですよね。

その後僕は幼少期からハーレーに憧れていたこともあって、友達を騙して

(人聞きの悪いこと言うな!!)そいつが持っていたハーレーを手に入れ今だ

大切にしているわけですが、これは「回すと可哀想」な感じがするんですよ。

バイクが「もうやめてください、ゆっくり走ってくださいよ」って言うんです。

ちなみにエンジンはショベルヘッドって奴。絶好調なんてモンじゃないくらい調子

がいいですが(異音もオイル漏れもナシ!!)それでも「回すエンジンじゃない

よね」と言うのがすぐに分かります。動き始めるときだけぐっと回して一気に

加速し、速度が乗ったら回転を上げないようにドコドコ走る。

これはこれで気持ちはいいんです。ただちょっと僕の感性に引っかからない。

バイクってこんなんじゃないよねと言う「コレヂャナイ」感が強いんですね。

で、どうしても内燃機が廃れる前に昭和の4気筒を1匹保護しなくてはいけないと

思い実行に移そうとしたんですが、いやはや高いのなんの。昭和のバイクは

軒並み値上がりしていて昔はただでもらえたようなバイクに3桁のプライスタグ。

もうムリだ。そう思った刹那、目にとまった奴がありました。FZX。貧乏人の

Vマックスなどバカにされ続け一般的なライダーに見向きもされなかった割に

その乗りやすさ故に教習車として返り咲いたという異色の経歴を持つレアバイク

です。他の昭和中古車が中古車どころか新車が買えそうな値段で取引されて

いるその陰に隠れ、車のタイヤ交換をするより安いくらいのプライスタグを付け

ひっそりと救出されるチャンスをうかがっている子がいました。よし俺が助けよう。

ちーん、お買い上げ。このバイクね、本当はVマックスが欲しいけど買えない

と言う人をもバカにした何とも中途半端なスタイルで本当に不人気だった

ようですが、エンジンは5バルブを搭載したかの名車FZ750と同じエンジンです。

後期型は3馬力ほどデチューンされ、出力特性も別物でかなりマイルドになって

いるとは言え750cc水冷5バルブ4気筒はそのまま。

こんなお買い得なバイクまず無いし、教習車などで案外走行距離が少ない個体

も結構あることからFZ750オーナーが部品とりなどに所有するようになると

とたんに値上がりする可能性も秘めているので飼うなら今です(本当は「買う」

ですが「飼う」でもあながち間違いではないのでとりあえずそのまま)。

さて乗り味ですが・・・・・・・・「モーター」っす。

アクセルをあけていくと1万回転までストレス無く回りきります。速いッスよ。

でもね、「モーター」なんです。以前乗らせて貰ったNC750があまりに上手な

味付けをしており「バイクに乗っている」感がとても上手に引き出されていたのと

対極にある「スムーズすぎる回転フィール」・・・。でも思えばそうでしたよ。

VF750のエンジンが「モーター」だとか「面白味に欠ける」とか言われてましたが

当時(レーサーレプリカブームの時)の4気筒ってピーキーな物こそあれど、

どれも実にスムーズに回りました。あぁ、これが昭和マルチの乗り味だ。

そんな風に思うとこの癖の無さも愛らしい・・・。

ふとそんなことを思いました。そう考えると今のバイクってのは有る意味昔の

バイクより「味」に気を遣っているのかも知れませんね。当時は「豪華」で

「ハイパワー」だったら良かったわけですから。

最近の250ccは17馬力だとか21馬力だとかのスペックが目につきますが、

当時の250ccは45馬力ですからね。2ストじゃないですよ。4ストで。

「さぞピーキーなんでしょうね」と思うでしょ。まぁ、ピーキーっちゃピーキーです。

でもたかが250ccです。「どっかーん!」といきなりパワーバンドに入り「うぉお!」

となるよりは、「ひたすら回って」いつの間にかびっくりするような速度域に

達していた、そんな気がします。

あぁしょうわのバイク。FZXのこの個性の無さ、癖の無さもまた昭和の大切な

1ページなんでしょうね。昭和マルチ。いい時代だったねぇ・・・・。