部下に仕事を教えるということ

部下の何人かに、猛烈に仕事が出来ない人がいる。

とにかく何をやらせてもダメなんです。大げさでもなんでもなく、その人が担当した

お客様は例外なく「○○さんを担当から外してください」とか、ひどい場合になると

「○○さんを担当から外してくれなければ、もう取引しません」とか「○○さんを

やめさせてください」なんてのも・・・。

とにかく例外なくお客様から出入り禁止を喰らう。普通なら絶対クビになっている

レベルです。

仕方がないので書類作成などをやらせるのですが、間違い率100%。

誤字脱字は当たり前だし、ページがバラバラのままホチキス止めして提出して

来たり。更に言うとこの人会社から渡されている携帯に一切出ません。

会社から支給されている携帯には仕事の電話しかかかってこないんだから

必ず出ろと。もし出られない場合は、電話できる状況になったらすぐさまコール

バックしろと言ってもそれさえ出来ません。

こう言っては悪いのですが、障害者レベルなのではないかと思うほど。

実は会社にはもう一人同じようなレベルの人がいます。

このような人が二人もいるってどんな会社かと思われるかも知れませんが、

どちらも縁故です。

そしてもう一人(こちらはBくんとしましょう)も、元々いた部署で手に負えなくなり

別の部署に異動になりました。

その部署の課長さんはまだ30半ばと若いのですが、僕は彼がBくんを指導して

いるところを目にして、ものすごく感動すると共に、ある種の劣等感に襲われ

ました。

ある時あたらしくBくんの上司となった課長(X課長としましょう)がBくんに

機械の操作方法を教えていました。X課長は一度丁寧に手順を教え、Bくんに

ノートをとらせます。機械の操作と言っても非常に単純で、普通の人なら1回で

しかもノートもとらず理解できるものだと思いますが、X課長はしっかりノートに

記録させてました。

次にBくんに自分でやってみるよう指示します。

Bくんいきなり間違います。しかしX課長は何も言いません。案の定機械は

トラブルを起こし、次のプロセスに進めなくなります。更に言えば修理(と言う程の

ものではなく、チェーンのはずれた自転車のチェーンをかけ直す程度ですが)

をしないといけません。

Bくんは自分がミスをしたことにも気がつかず(普通は気がつくと思いますが)

次のプロセスに進もうとして進めず、首をかしげています。

X課長は声を荒げることなく「自分がつけたノートを見てみろ」と言いました。

ノートを見終わるBくんに「何か間違っていたところはあるか」と質問。

するとBくんノートを見ているのに答えが分かりません。

ノートにちゃんと要点をまとめて書いていないからです。

するとX課長はどこが要点かを伝え、それをノートに書くよう指示し、改めて

間違っていたところをB君に問うと、今度はB君正解。

「最初の手順が間違えてました」と。

X課長は自分で無言で機械を直し、「もう一度やって見ろ」とB君を機械の前に

たたせます。

僕だったら最初のプロセスでB君が間違えそうになったとき「違うだろ!」と言って

しまっていたでしょう。

だって、そこを間違えられたらあとで機械を直すという余計な手間をかけさせ

られるのは僕ですから。

しかしX課長はそうしませんでした。

それからもX課長はB君の指導に当たり、彼が間違っていてもあえてやらせて

その後間違いを指導する。更に言うとB君の間違いによって出た損失などを

自分が残業してフォローしてました。

これこそがリーダーの資質というものでしょう。本当に感服いたしました。

自分より遥かに年下の彼に、これからの人生で最も大切な事を教えて貰った

気がします。

この人との接し方というのは、自分の子供に対しても至極有効どころかまさに

手本とすべきあり方であるように思います。

ものすごく時間も手間もかかるやり方ですが、最良にして最善の上唯一の道。

仕事でも勉強でもスポーツでも何でも、一番大切なのは基礎です。

時間がかかったとしてもしっかりと基礎を積んだ人というのはその後必ず伸びる

ものだと思います。X課長はこのように「全く使えない人」を「使える人」に変えて

しまったわけです。

私のように「こいつは使えない」と無視を決め込んで、その部下がすべき仕事を

捌くために残業している僕と、使えないと決め込まず使えるようにするために

時間を割いて、それによって残業するX課長。今後の成果に差が出てくるのは

明らかです。

例えば一つの課に5人の人がいたとして、一人が3人分の仕事が出来、3人は

1人分の仕事、そしてもう一人がマイナス1人分の仕事をしていたとします。

(マイナスの仕事とはつまり、自分のことが出来ず更に回りの足を引っ張る

状況です)この場合3人分の仕事が出来る人がいたとしてもマイナスの人を

ゼロに戻すだけで2人分の労力が必要となり、5人いるのに4人分のパフォー

マンスしか出せません。ただ、マイナスの人がせめてゼロになってくれれば、

7人分の仕事が、1人分の仕事が出来るようになれば8人分の仕事が、さらに

そうなると5人で10人分15人分の仕事としての成果が出せるようになります。

本当に反省しています。僕もX課長のように、しっかりと部下を育てなければ。

・・・・・といいつつ、その出来ない部下が持ってきた書類がミスだらけなことに

あきれ「もう俺がやるからいいよ」というと、「そうですか、じゃ、お願いしまーす」

などと言われると、ライダーキックしてやりたくなりますが、やはり我慢と言うことで。