拝啓 所ジョージ様

この前本屋さんで立ち読みをしていたんですね。そしたら見つけてしまいましたよ。

そう、所ジョージさんの本。デイトナだったっけな?

そこで古いスーパーカブをレストアする特集などが組まれていました。

・・・・・本当にお願いですからお金に物を言わせて庶民の居場所に土足で上がり

込んでくるのはやめてください。

所ジョージさんというのは確かに素晴らしいセンスをお持ちです。単なる成金では

なくて、庶民目線であるにもかかわらず、卓越したセンスをお持ちなんですよ。

それは分かります。でもですね、既にあなたは庶民じゃない。大金持ちでしょ。

そういう人が金に物を言わせて庶民の居場所に割り込んでくると、密かにやりくりして

そういう楽しみを求めている庶民がものすごく迷惑するんです。

お金持ちは庶民が「羨ましい」と思いつつ見向きが出来ない物を買ってください。

あなたのおかげで今まで密かに楽しんでいた物が、一気に有名になり値段が高騰

するというのにもう我慢が出来ません。

スーパーカブなんて新車で買っても30万円しないリーズナブルなバイクです。

見方に寄れば究極的にダサイオッサンビジバイ(オッサンが乗るビジネスバイク)な

訳ですが、同時に世界最高のツールであり、庶民の足であり、生活の一部である

わけです。

そしてそんなスーパーカブも、ひとたびあの機能的ではあるけれどなんだかダサイ

泥よけを取ってしまうと「実はカスタムベースとして優れているんじゃないの?」と

言うことに多くの人が気がつき始め、最近ではカブベースの素晴らしいカスタムも

頻繁に目にするようになりました。

しかしそれ以前から「カブマニア」というのは存在していて、古よりも形の変わらぬカブ

を、自分の時間とわずかな小遣いを注ぎ込み愛でているひとも数多くいる訳です。

実はそれほど素晴らしいカブではありますが、まだまだそこに目を付ける人の数は

許容範囲であり、いろいろなものが比較的安価で手に入る状態だったんです。

それを所ジョージさんに目を付けられ、雑誌で特集を組まれた日にゃぁ、もうあなた

あっという間に品薄ですよ。今までお小遣いで買えていたものが、貯金するなり

ローン組まないと買えない値段になるわけですよ。

BMWの時もそうでした。それまでBMWなんて比較的安価で買えていたのに

金に物を言わせたカスタムでかっこよさを引き出したために、今までひっそりと

己のカスタムを楽しんでいたり、或いは「今度乗ってみようかな」と密かに思って

いた人も、もう手が出ない或いは出しにくい価格になってきているんです。

ほんとにね、こう言うのは自分でなけなしの金を絞り出して頑張ったり、寝る時間を

惜しんでこつこつやるからいいんですよ。と言うか、そういう人のためのベース

をあっさり奪うのをやめて欲しいんです。

ベンツのSクラスのステーションワゴンを造る等というのはいいと思います。

だけどボロボロのカブを、とんでもない手間と金をかけて、それを人にやらせている

のに面白いところだけ自分でやってあたかも自分で造っているように見せるのを

やめて欲しい。そんな事してないというかも知れませんがそう見えるんです。

ハッキリ言って僕が所ジョージさんについて書いていることは全て僕のひがみです。

でもね、なんだか頭に来るんですよ。

ホントにこつこつこつこつカブを直して、ブラストをかけたいけどお金がないから

ものすごく苦労してペーパーで磨いたり、部品を付け替えたくてもなかなかないから

代用できるものを探して加工したり、或いは地道にオリジナルを探したりするわけです。

僕たちは。それを所さんはぱーっとブラストかけて綺麗にしてしまったり、ないパーツは

オリジナルで造ったり。

昔アメ車のオリジナルホイール(おそらく元は鉄っちんでしょうね)をアルミで造るという

様なことをされていたと思います。

これ、僕らもすごく憧れるんですよ。でもそれが出来る人はそんなにいないし、或いは

そういうことをする場合、他の物を犠牲にして(例えば大好きなお酒やたばこを控える

とか)手に入れたりするんです。

所ジョージさんはお金持ちなんだから、是非とも庶民が楽しんでいることに大枚

まき散らし土足で入り込んでくるのをやめてください。

いや、いいんですそういうことをされても。何をしても自由です。

でも金に物を言わせて作り上げた物を「我々庶民に自慢する」のはやめてください。

是非ともお金持ちの仲間達の間だけで「俺はお前達とちょっと違ったセンスを持って

いるんだぜ」と自慢してください。