転職とジョブホッピング

ちょっと前に「今はタトゥーが当たり前になったと言うけど本当にそうかなぁ?

と言う事を書いていてふと「最近はジョブホッピングってのも一般的だけど

本当にそうかな?」と思ったので書いてみます。

さて、僕が就職した頃は「転職する」などと言うと親類縁者、友達総出で

「考え直せ!」と言われた物です。当時は「転職」なんて言葉よりも「脱サラ」

と言って、要するにサラリーマンから「一抜け(脱出)します」みたいなイメージ

が強かったような気がします。更に言うとサラリーマンやめて再び勤め人と

言う人は殆どおらず、「脱サラしてラーメン屋開業」とか「脱サラして貿易会社

立ち上げ!」みたいな感じで「勤め人をやめて起業する」という感じではなかっ

たかなと思います。そんな中、1990年代から海外に暮らしたり、或いは海外

で仕事をしたりする機会に恵まれ、そこで転職に関して日本との大きな違い

に気がつきました。

日本人はまだ安い人材を雇ったうえで会社に貢献できるよう教育するという

スタイルを好みます。しかしこれは大きな間違いです。海外では。

ジョブホッピングが当たり前の国において基本となるのがある意味での

「同一労働同一賃金」です。営業やエンジニアを例に取ると分かりにくくなる

ので、わかりやすいように「営業事務」を例にとって考えてみます。

ある事務所で「営業事務募集」の広告があったとします。条件は拘束時間:

午前10時から午後3時。作業内容:各営業担当者がその日の前日に作成

した営業報告書をワード形式でタイプして所定のフォルダーに保管。

給料:週200ドル。必須条件は「ワードソフトがパーフェクトに扱えること」。

日本人だと「給料安いけどそのうち能力が認められれば上がるかも」などと

思って採用試験を受けるかも知れませんし、或いは採用されたはいいけれど

給料が安すぎて「もう少し給料のいいところに転職したい」などと思うかも

しれません。ですがそうはなりません。絶対に。上記条件で雇われた場合

何年経とうが給料は変わりませんし、他に転職したところで同じような作業

内容に対しては同じような給料しか提示してもらえません。

もしもっといい条件で働きたい場合どうするか。もっと給料が欲しい場合どう

するか。それがジョブホッピングです。但し待ってください。あなたの能力が

ワードソフトを扱えるだけである場合、どこに行っても週200ドルを超える

給料は期待できません。ではどうするか。自分でスキルを付けるのです。

営業事務ではなくセールスのセミナーを受けセールスのスキルを付ける。

或いはエクセルやその他ビジネスソフトの勉強をして新たなスキルを身に

付ける。そして会社と交渉するのです。「自分はセールスのスキルを身に

付けた。就業時間は朝8時から夕方5時、セールスもするので給料を週200

どるから500ドルに上げて欲しい」。もしこれで受け入れてもらえるならとり

あえず会社を変える必要はありません。ただもし会社が「いや、今セールス

マンは足りているからダメだ」と言われた場合、セールスをして書類をワード

でまとめる能力がある自分を週500ドル以上で雇ってくれる会社にジョブ

ホッピングするわけです。

ちなみにワードで書類をまとめるのみの契約であるにも関わらず、エクセルで

表を作って欲しいと言われた場合それは出来ないと拒否できますし、或いは

出来る場合サラリーを上げて貰う交渉も出来ます。但し「ワードだけじゃなくて

エクセルで表も作れる人を雇いたいのであなたはやめてくれ」と言われた場合

それに従うしかありません。会社が「今度エクセルもやって欲しいから」と

研修を受けさせてくれたりする事はないため、こういう事を言われたときのため

或いは自分の能力を上げると同時にそれを高く買ってくれる会社にジョブ

ホッピングが出来るようにするため「自分でスキルを磨く」のです。

まとめると、ワードしかでき無い人は週200ドル。エクセルで表も作れるので

あれば週250ドルもらえるのであれば、その能力は「自分で付ける」のが

大前提であり、その能力を必要とする組織にそれに応じた対価で雇ってもらえ

るようにするのが「ジョブホッピング」というわけです。

さて、このところ中途で面接に来る人が非常に多い様に思います。

コロナの影響で職が無くなったと言うことではなく、日本において「転職」が

当たり前になった証拠だと思います。ここであえてジョブホッピングではなく

「転職」としたのには訳があります。

採用試験に来る人の多くがろくなスキルも持っていないのに、それまで得て

いた給料レベルは手に出来ることを望んでいるのです。

そんなムシのいい話があるはずがありません。

日本の場合「ベースアップ」というシステムがありました。おそらく今でも多く

の会社がそのシステムを残していると思いますが、これだけジョブホッピングが

盛んになったのであれば、僕はベースアップのシステムは一切やめるか、

或いは転職してきた人にはそれを適用するべきではないと思います。

なぜならばベースアップというのは長く務めることによって習熟度が増している

と言う前提による物だと思います。なので新しい職場に移るのであればその

習熟度はリセットされてしかるべきです。或いはシステムエンジニアや職人さん

の場合その限りではありませんが、それこそ出せた成果と給料をリンクさせて

考える必要があるでしょう。すなわち「習熟している」という前提で給料に

なにがしかの上乗せがあった場合、「習熟していない」或いは「成果がだせ

ない」のであれば即刻クビなのが当然なのではないでしょうか。

今まで本当に多くの人の採用面接をしましたが、日本人でこの部分が理解

出来ている人が至極少ないのに驚きます。なんのスキルもないのに今給料を

払ってくれる会社にいられるにもかかわらず、何故そこを去ろうとするのか。

多くの人が「もっと給料がもらえるところ」とか「もう少し楽なところがいいなどと

おもっているのだと思いますが、そんな人どこも採用しないと思います。

やる気も能力も無いのにもし今雇ってくれているところがあるとするならば

その会社に心から感謝しつつ自分がどうすればその会社に貢献できるか

考え実践した方が、あなたのためにも会社のためにもなりますよ、と思います。

これは蛇足ですが、頻繁に転職している人は100%雇わない方がいいと

思います。絶対に役に立ちません。

転職を繰り返す人というのは絶対に能力も責任感もありません。もしその人が

何かに気がつき、或いは自分が進むべき道が見つかって一つのことに集中

することが出来るようになったときはそこで初めて世の中に貢献できる人に

なれるかも知れませんが、もしあなたがそういった人を雇うかどうか検討して

いるのであれば、「世の中に貢献できる人になってから」雇った方がいい

のではないかとおもいます。