これはその他に書こうかと思ったんですが、WGの話だし、バンバン以外ネタが
無くて可哀想なので、ここに書くことにします。
さて、ロッカークラッチなる物をご存知でしょうか?
最近のオートバイの操作系はほぼ例外なく、右手:アクセル、右足:ブレーキ
左手:クラッチ、左足:ギアペダル。となっていますが、その昔のハーレーや
インディアンは「左手:ギア」、「左足クラッチってなやつが有るんです。
かくいう僕のバイクもそうなんです。
ノーマルは今の一般的なものと同じだったのですが、一度フットクラッチの
バイクに乗ってみたくて、カスタムする際にフットクラッチにしてみました。
このように左足でクラッチを操作するタイプを総じて「フットクラッチ」と呼びますが
そのクラッチの方式の一つが「ロッカー」と呼ばれる物です。
車を運転する際、発進と停止では必ずクラッチを踏まなければなりません。
(オートマではなく、ちろんマニュアルの車ですよ)
車のクラッチは押し込むとクラッチが切れ、クラッチペダルを離して(上げて)
行くとクラッチがつながるわけですが、車の場合タイヤが4つ有り、ブレーキも
踏めるので、両足を使っても特に操作に困ることはありません。
さて、このクラッチがバイクに付いていたらどうでしょう?
左足がクラッチと言うことは、クラッチを踏み込んでいるときには左足を地面に
つけることが出来ないと言うことです。
例えば4速で走っていて前の信号が赤に変わったとしましょう。
車の場合右足でブレーキを踏みつつ左足でクラッチを切って、左手でギアを
ぽんとニュートラルに入れればいいだけです。ギアをニュートラルにする際も
車はHゲージですから、4速や5速からいきなりニュートラルにすることが
出来ます。対するバイクのギアはほぼリターンですから、左足でクラッチを切り
左手でシフトノブを操作してカチャカチャとニュートラルを探さなければなり
ません。停止線が来る前にニュートラルが見つからないと、クラッチペダルから
足をはなせず、右足を付くしかないわけです。
これは困る!と言うわけで出来たのがロッカークラッチ。
ロッカークラッチは車のように踏み込むタイプのペダルではなく、シーソーの
様な形をしていて、ハーレーの場合そのシーソーを前に倒していくとクラッチが
つながり(車の逆ですね)、後ろに倒すとクラッチが切れるのですが、
そのどの位置でもペダルから足を離せば、その位置でペダルが固定されます。
つまり後ろ(手前)に倒すとクラッチが切れた状態になるのですが、その状態で
固定できる。つまりギアが入っていようがいまいがクラッチを切った状態で
ホールドしてくれるので、とりあえず左足を地面につけるわけです。
もしその時にニュートラルに入っていなければ、一旦停止してから左足を
クラッチペダルに載せ、改めてニュートラルを探せるわけです。
或いはニュートラルを探さずとも、一足まで入ればその状態でクラッチを切って
ホールドし、青になったらペダルに足を載せ、シーソーを前に倒せばクラッチが
つながり発進できるというわけです。
ちなみに上に「ハーレーの場合」と書きましたが、インディアンの場合、ハーレー
とは逆で、前に倒すとクラッチが切れ、後ろに倒すとクラッチがつながる(車と
同じ)のですが、元々この機構を最初に作ったのはインディアンだったらしく
ハーレーは「同じにするの、いや!」と逆にしたと聞いています。
さて、どんな状態でもクラッチを切った状態でホールドできるロッカークラッチ
に対して、車と同じように、前に押し込んでクラッチが切れ、離していくとクラッチ
がつながるタイプのものを「ノンロッカー」と言います。
これはアメリカなど「一回走り始めてしまったらほぼギアチェンジなんかしねぇ」
と言う状況であるならまだいいですが、それでもいろいろと不便が有ると
思います。日本では自殺行為でしょう。
さて、自殺行為が出てきたので「スーサイドクラッチ」について説明しましょう。
足でクラッチを切るタイプのものを「スーサイド」というと勘違いしている方が
多くおられますが、それは違います。
スーサイドクラッチというのは「ノンロッカークラッチ」に加え、「フロントブレーキ
無し」のバイクを言います。
「フロントブレーキがないってどういう事?」と思われる方もいるかと思いますが
最近のテレスコピックタイプなどと違い、ハーレーのチョッパーは「ガーター」
とか「スプリンガー」なるフロントフォークが存在します。
それがどういうものかの説明は割愛しますが、いずれも「剛性のあまりない
鉄の棒」で出来ているわけです。それに強力なブレーキをつけてしまうと
フロントブレーキをかけた際フォークがよじれると言う問題が起きるわけです。
また、ましてやフォークを長くしたチョッパーなどなおさら。
長いフォークの先にあるホイールはスポークタイプやインベーダーなど様々
だと思いますが、長いフォークの先にあるタイヤにブレーキがあると、かっこ悪い
んですね。というか、フロントブレーキがない方がホイールが綺麗に見える。
それにフォークが長いと言うことはブレーキケーブル(ホース)も長く垂れ下がる
わけで、余計かっこ悪い。だから見た目を重視したチョッパー乗りはフロント
ブレーキをつけない人がいるのです。
さて、フロントブレーキがないバイクにノンロッカークラッチのバイクを想像して
見てください。様々な場面で不便なことばかり。更に言えば坂道発進。
せめてフロントブレーキが有ればフロントブレーキを使って坂道発進をする
事が出来ますが、それがないとどうでしょう?
左足はクラッチ操作のために地面につくわけには行きません。右足はバイクを
支えるため地面におろしているわけですが、坂道でブレーキもなく、下にずり
下がろうとするバイクを右足一本で支えることなど出来るでしょうか?
普通の人はまずムリでしょう。そんなわけでスーサイドなんですよ。
つまりフロントブレーキのないノンロッカークラッチ仕様のバイクのみを
「スーサイドクラッチ」というのです。
僕はまだスーサイドクラッチなど知らない頃、あるバイクショーに出品された
非常に美しいチョッパーにフロントブレーキがないのに気がつき、オーナー
(白人男性。おそらくアメリカから招待された人だと思う)に「フロントブレーキは
付いてないんですね。でもその方がホイールが綺麗に見えるなぁ」と話し
かけたところ、「フロントブレーキ?あんなモン女子供がつけるもんだよ。
いかしたチョッパーに乗ろうって男ならそんなモンつけねぇよ!」と言われた
事があります。そんなことから、「スーサイド」というのはそうじゃない(つまり
フロントブレーキ付き)チョッパー乗りをバカにする意味もあるのでは無いかと
思ったりもします。
と言うことは、ロッカークラッチだったり、ましてやフロントブレーキが付いている
バイクに乗っている人が、バイク乗りの集まりなどで本当のスーサイド乗りに
「僕のもスーサイドですよ!」等といってしまうと、自分のバイクの写真を見せた
時に「ケッ、違うじゃねぇか!」等と笑われるかも知れませんから、注意して
ください!