堪らなく楽しい数学


(ゼロ除算の自明さについて)

人間の感性の観点から、ゼロ除算の自明さについて触れて置きたい。ゼロ除算の発見は誠に奇妙な事件である。まずは、近似の方法から自然に導かれた結果であるが、結果が全然予想されたことのない、とんでもないことであったので、これは何だと衝撃を受け、相当にその衝撃は続いた。まずは、数学的な論理に間違いがないか、厳重に点検を行い、それでも信じられなかったので、多くの友人、知人に意見を求めた。高橋眞映山形大学名誉教授のゼロ除算の一意性定理は大事だったので、特に厳重に検討した。多くの友人も厳重に時間をかけて検討した経過がよく思い出される。その他、いろいろな導入が発見されても、信じられない心境は1年を超えて続いたと言える。数学的に厳格に、論理的に確立しても 心情的に受け入れられない感情 が永く続いた。そのような心境を相当な人たちが抱いたことが国際的な交流でも良く分かる。中々受け入れらない、ゼロ除算の結果はそうだと受け入れられない、認められない空気であった。ゼロ除算の発展は世界史上の事件であるから、経過など出来るだけ記録するように努めてきた。

 

要するに、世界中の教科書、学術書、定説と全く違う結果が 世に現れたのである。慎重に、慎重に畏れを抱いて研究を進めたのは 当然である。

そこで、証拠のような具体例の発見に努めた。明確な確信を抱くために沢山の例を発見することとした。最初の2,3件の発見が特に難しかった。内容は次の論文に、招待され、出版された:

 

 http://www.ijapm.org/show-63-504-1.html :


ゼロ除算を含む、山田体の発見、

原点の鏡像が(原点に中心をもつ円に関する)無限遠点でなく ゼロであること、

x,y直角座標系で y軸の勾配がゼロであること、―  tan pi/2  = 0

同軸2輪回転からの、ゼロ除算の物理的な意味付け、

 

これらの成果を日本数学会代数学分科会で発表し、また、ゼロ除算の解説 (2015.1.14) を1000部印刷し、広く配布してきた。2年間の時間の経過とともに単に想念上の数学ではなくて、我々の数学として、実在感が確立してきた。その後、広範にゼロ除算がいろいろなところに現れていることが沢山発見され、やがて、ゼロ除算は自明であり数学の初歩的な欠落部分であるとの確信を深めるようになってきている。

 

単に数学の理論だけでなく、いろいろな 具体例が認識の有り様を、感性を変えることが分かる。そこで、何もかも分かったという心境に至るには、素朴な具体例で、何もかも当たり前であるという心理状況に至ることが大事であるが、それは、環境で心自体が変わる様をしめしている。本来1つの論文であった原稿は 招待されたため次の2つの論文に出版される:

(2016) Matrices and Division by Zero z/0 = 0. Advances in Linear Algebra

& Matrix Theory, 6, 51-58.

http://www.scirp.org/journal/alamt  http://dx.doi.org/10.4236/alamt.2016.62007

DivisionbyZeroz/0=0inEuclidean Spaces

International Journal of Mathematics and Computation 9 Vol. 28; Issue  1,2017)

 

沢山の具体例が述べられていて、ゼロ除算が基本的な数学であることは、既に確立していると考えられる。沢山の具体例が、そのような心境に至らしめている。

 

ゼロ除算の自明さを論理ではなく、簡単に 直感的な説明として述べたい。

基本的な関数 y = 1/x を考え、そのグラフを見よう。原点の値は考えないとしているが、考えるとすれば、値は何だろうか? ゼロではないか と 思えば、ゼロ除算は正解 である。それで十分である。その定義から、応用や意味付けを検討すれば良い。― 誰でも値は ゼロであると考えるのではないだろうか。中心だから、真ん中だから。あるいは平均値だからと考えるのではないだろうか。それで良い。

0/0=0 には違う説明が必要である。条件付き確率を考えよう。 A が起きたという条件の下で、B が起きる条件付き確率を考えよう。 その確率P(B|A) は ABの共通事象ABの確率P(AB)と A が起きる確率P(A)との比 P(B|A)P(AB)/P(A) で与えられる。もし、Aが起きなければ、すなわち、P(A) = 0 ならば、もちろん、P(AB) = 0. 意味を考えても分かるようにその時当然、 P(B|A) = 0である。すなわち、0/0=0 は 当たり前である。

 

                 ( 以下、次号 )