堪らなく楽しい数学(19)


(ゼロ除算と体の構造)

ゼロ除算z / 0 = 0は 分数の自然な拡張として既に1 + 1 = 2 のように自明であり、しかもそれは、我々の数学そのものであり、自然現象もきちんと表している。しかしながら、永い間の偏見の世界史、それも千年を超える偏見であり、天才的な数学者たちの足跡を省みて、中々世の中で理解されない状況があるのは、世の関係サイトを見ても良く分かる。それらには、そもそもゼロに対する恐怖心とゼロ除算にからむ、不可思議で奇妙な論調を見ることができる。

 

ゼロ除算のこのような歴史は、やがて人類の愚かさの象徴であると世界史で記録されるだろう。

 

1/0 とは何だと、恐怖心を抱く者は 尚世に多い状態と言える。公理論的に吟味したか、現代数学とは違う、変な世界の数学ではないかと特に優秀な人たちが述べてきたのは大変興味深い事実である。

最近、数学基礎論、公理論、計算機科学の専門家たちのゼロ除算に関する論文を発見した。

Meadows and the equational specification of division

J A Bergstra1

Informatics Institute, University of Amsterdam,

Science Park 403, 1098 SJ Amsterdam, The Netherlands

Y Hirshfeld2

Department of Mathematics, Tel Aviv University,

Tel Aviv 69978, Israel

J V Tucker3

Department of Computer Science, Swansea University,

Singleton Park, Swansea, SA2 8PP, United Kingdom

が、結論ではとにかく、奇妙なことが書かれている:

5 Concluding remarks and further questions

We notice that a conference version of this paper, though with a quite different emphasis of presentation, has appeared as [2].

The theory of meadows depends upon the formal idea of a total inverse operator.

We do not claim that division by zero is possible in numerical calculations involving the

rationals or reals. But we do claim that zero totalized division is logically, algebraically and computationally useful: for some applications, allowing zero totalized division in formal calculations, based on equations and rewriting, is appropriate because it is conceptually and technically simpler than the conventional concept of partial division. Furthermore, one can make arrangements to track the use of the inverse operation in formal calculations and classify them as safe or unsafe dependent upon 0−is invoked: see [11]. We expect these areas to include elementary school algebra, specifying and understanding gadgets containing calculators, spreadsheets, and declarative programming. Of course, further research is necessary to test these expectations: at present, our theory of meadows is a theory of zero totalized division, constitutes a generalization of the theory of fields, and is known to be useful in specifying numerical data types using equations.

 

文献を見れば、彼らが相当な専門家であることが分かる。 上記は要するにゼロ除算を含むいろいろな公理系を建設できるが、幻のようであるが計算に役立つと言っているようである。 きちんと書かれているのは、ゼロ除算が可能であるとは 主張しない ということである。

しかるに、我々はゼロ除算は可能であり、ゼロ除算は我々の数学そのものであると言っている。我々の本質的な原理は、ゼロ除算z/0は定義そのものであり、そのように定義し、導入することによって、数学は完全になり、新しい世界を拓くと言っている。いろいろな証拠を挙げて、解説してきた。

しかしながら、それでもなお、1/0 とは何者かという、思いが残っているかも知れない。 それは数と言えるのだろうかなどの雑念が残っているかも知れない。

 

このような折り、2015.10.3.山田正人氏が研究室を訪れ、上記の論文とともに氏の考えを夢中で討論した。そのときは、2人ともそんなには気にしなかったのであるが、山田氏は、ゼロ除算を含む 体の構造を入れる方法を説明された。 体とは、四則演算が自由にできる 数学の述語で、 言わば 数の資格もつ性質 を表している。こうなると、ゼロ除算z/0は代数的に堂々と数であると言明できることになる。

念を押したいのは、ゼロ除算z/0=0とは定義そのものであり、その定義で、全ての理論は現代数学の中で、新しい世界を展開できるということである。

実際、山田氏の上記の理論から、新しい結果は、何一つ得られない、数学の内容としては自明なものばかりである。

しかしながら、引用された上記論文や、体の概念の重要性から、山田氏の発見された体は 極めて重要であり、数とは 山田氏の発見された体の元、そのものである と言える。

山田氏の発見された、体の構造とは簡単であるが、新規な面白い概念を含んでいる。

極めて面白いのは、y軸の勾配はゼロであるという知見をゼロ除算の帰結として得ていたが、山田氏の上記の考えは、そのことの帰結を微妙な論理で同様に導いている事実である。 複素数体では z/0が定義できないが 山田 体Yでは 自由にできて、言わばゼロ除算が自由にできる、美しい世界である。

 

尚、上記研究者J A Bergstra教授とは直接メールによる交流に成功し、山田 体の理論、その他、我々のゼロ除算の結果について、それらの 新規性と論理の正しさ について、認めていると 質問内容などから、判断される。今後の交流を楽しみにしている。

 

  ( 以下、次号 )