堪らなく楽しい数学


(真無限と破壊)

数式を用いずに解説を進めるのは難しい点が有ると感じてきている。今回はゼロ除算が拓いた世界を解説しよう。

 

3辺の長さをa, b, c とする三角形を考える。その位置で、例えば、1辺 b をどんどんのばしていく。一方向でも、双方向でも良い。どこまでも、どこまでも伸ばしていくとどうなるであろうか。bは限りなく長くなるが、結局、辺 b は a, c の交点 Bと平行な直線になって、 それ以上伸ばすことや長くすることはできないことに気づくだろう。正方向だけに伸びれば、辺 c は辺 b の方向と平行な半曲線に、負の方向に伸びれば、同様に辺 a B を通る b の方向と平行な半曲線になる。いずれの場合にも、b はそれ以上伸びないと言う意味で 真無限の長さ と表現できるだろう。もちろん、有限の長さではない。大事な観点は、ある意味で、もはやそれ以上伸びない、大きくならないという意味で、限りがあるとも言える無限である。

 

途中で作られる三角形の面積は辺bをどんどん伸ばしていくと、どんどん増加し、従来の数学では、面積は無限に発散すると表現してきた。平行線で囲まれる() 面積、あるいは、平行線で囲まれる() 部分を切った部分(一方向に辺 b を伸ばした場合)は面積無限であると考えるだろう。ところがゼロ除算は、それらの面積はゼロであると述べている。一般に、長さ b をどんどん大きくしていくと、幾らでも大きくなっていくのに対して、真無限に至れば 突然ゼロになるという結果がゼロ除算の大事な帰結である。この現象は関数  y  =  1 / x の様子を x が正方向からゼロに近づいた状況を考えれば、理解できるだろう。 1 / 0  =  0  である。― b を無限に近づけた状況を知るには、 1 / b の原点での状況を見れば良い。

 

実に美しいことには、上記三角形の面積の状況は、3直線で囲まれた部分の面積を3直線を表す方程式で書いて、ゼロ除算の性質を用いると、解析幾何学的にも導かれるという事実である。ゼロ除算の結果を用いると、解析幾何学的に証明されるという事実である。

この事実は普遍的な現象として 破壊現象の表現 として述べられる。直方体の体積でも、1辺を真無限まで伸ばせば、体積はゼロである。円柱でも真無限まで伸ばせば、体積はゼロである。真無限まで行けば、もともとの形が壊れているためと自然に理解できるだろう。

 

円や球の場合にも、半径が真無限まで行けば、半平面や半空間になるから、同じように面積や体積がゼロになる。これらは、ゼロ除算と解析幾何学からも導かれ、ゼロ除算は基本的な数学であることが分かる。このことは、空間は、限りなく大きなものではないということをも述べていて、楽しい。次はユークリッド幾何学の基本、平行線についてのゼロ除算からの新しい視点について解説しよう。

 

   ( 以下次号