(ゼロ除算と双曲線)
ゼロ除算は 我々の数学、空間が、所謂ユークリッド空間でも、非ユークリッド空間でもない、全く新しい空間、世界であることを示している。そこで、このことを明確に見るために、超古典的な双曲線についてみてみよう。標準系
・
= 1,
( a, b
>0 )
で考えよう。この双曲線は 2つの直線 y = (b/a) x, y =-(b/a) x を漸近線としている。ところが、実はこれらの漸近線は双曲線の接線になっていることをまず見よう。曲線の接線とは接点が存在して、そこで曲線と直線の勾配が一致しているということである。まず、原点が双曲線上の点であることは、既に我々の空間の認識、無限遠点がゼロで表されることから、歴然であるが、双曲線を極座標で書いて、r = の形に表現すれば、ゼロ除算算法で、r がゼロ、すなわち、原点を含むことから、数式上でも確認できる。しかも、r がゼロになるときは 方向がちょうど漸近線の勾配の方向であることが分かる。漸近線が双曲線と無限遠点で接していることも見える。これらで、原点は双曲線上の点で、漸近線が接線になっていることが確認された。
他方、双曲線が原点を含むことは、双曲線の良く知られた媒介変数表示
x = (
+ t
), y =
(
- t )
で t = 0 として、ゼロ除算1/0 = 0を知れば、実は当たり前でもあった。
勾配がmである双曲線の接線は
y = mx + と y = mx -
で与えられるが、双曲線との交点は
( ,
)
と原点に対称な点である。m が漸近線の勾配と一致するとき、ゼロ除算で考えるとこれらの交点が原点に一致しているから、ゼロ除算がよく現れていて、 楽しい。これは双曲線の頂点 (-a, b ) と ( a, 0 ) では、 y 軸に平行な接線と共に、x 軸も接線になっていることを示している。これは無限遠点における接線が原点に移動していると解釈される。無限遠点が ゼロで表されるからである。
漸近線が双曲線の接線であるとの新しい知見が、発見ができたが、接線であることは自然なものと言えるだろうか。
双曲線の接線に焦点から垂線を下ろした点は 補助円 x^2 +y^2 =a^2 を描くという性質がよく知られているが、漸近線を接線と考えなければ 漸近線に対応する4点が補助円の例外の点として抜けてしまう。補助円は完全ではない。
さらに双曲線の接線と2つの直線 x = a, x = -a の交点を直径とする円は焦点を通るという命題でも 漸近線を双曲線の接線と考えれば、その命題を満たしている。 これらの超古典的な主題における新しい知見は、数学が完全でなかったことを示している。このような視点からも、古典的な数学でさえ見直す必要性が広く現れてきたと考えられる。
全く新しい興味深い現象を見ておこう。
双曲線上の点を媒介変数表示しよう。x = a sec k, y = b tan k と置くとその点における接線の x 軸切片の座標は x = a/ sec k, y 軸切片の座標は y = - b/tan k で与えられる。kがゼロの場合、これらの交点は、ゼロ除算算法で、x = a, y =0 となる。すなわち、接線の両軸で切られる線分は、双曲線の頂点ではy 軸に平行な直線になるのではなく、x 軸上の線分 [ 0, a ] になることを示している。この線はy軸の勾配はゼロであるから、接線の資格さえ有している。このようにゼロ除算が関係するときに直角に曲がる現象は広く現れている。 ゼロ除算算法が拓いた新しい世界, 現象であるとして、 注目していきたい。
( 以下、次号 )